大工道具に生きる / 香川 量平
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050510(日本の技術より)鐇型与岐型15cm鉞型著者所有の大工鉞44 その21  鉞(まさかり)の話再び 大きな鉞を担ぎ、熊に跨り、丸に金の腹掛をして多くの動物たちを従えた怪力の金太郎は、日本の童話や童謡に登場して、今も語り継がれています。また5月5日の端午の節句には、床の間に鉞を担いだ金太郎の人形を飾り、子供たちが元気に育ち、強い金太郎にあやかって欲しいと願いを込めています。 金太郎が担いでいる大きな鉞は、古い昔には鐇たつきと呼び、兵器や刑具に用いられ人々に大変恐れられていました。昔、中国の皇帝は鉞を権威の象徴とし、出陣する武将に対し、皇帝自ら鉞を授けたといわれています。 金太郎が担ぐ鉞は、相模国(神奈川県)の足柄山に住む、多くの動物たちに対して権威の象徴を表わす旗じるしであったのでしょう。金太郎は平安時代の後期に実在した人物で、21歳の時、源頼光に見出され、「坂田金時」という名を与えられ、頼光の家来となり、四天王の一人となりました。頼光は後に勅命により、家来の四天王と共に丹波国(京都府)の大江山に住む、酒呑童子という鬼を退治した話で有名です。 西洋の童話の『イソップ物語』の中に「金の斧と銀の斧」の物語があります。欲張りのきこりが、最後に何も手にすることができず、自分の鉄の斧もなくしてしまう物語です。幼い頃、父母から、決して人間は嘘を吐いてはいけないと、きつく教えられたものでした。 金の斧と銀の斧といえば、今も大きな船の進水式に見ることができます。船主側の社長夫人か令嬢が、白い手袋をはき、式場まで引いてある綱を、金色の斧で切断すると、大きな船体がゆっくりと海に向って滑り出し、綱に結ばれていたシャンパンの瓶が船首に当って砕け、船の前途を祝福するのです。薬玉が二つに割れて、五色の紙片が散る光景は実に見事なものです。戦前、三菱長崎造船所で進水した「戦艦武蔵」は進水の準備が完了すると命名式を行い、造船所の所長が銀の斧で綱を切断したそうです。閑話休題 故、吉川金次氏の著書『斧・鑿・鉋』の中に「出土斧の追跡」という項があります。各地から出土した各種の斧を復元して実現した結果、次のように分類することができるように思うと説明しています。要点を抜粋して述べると、(1)割斧型。これには二つの型があり、一つは短冊形の比較的大きなもので、上部に袋部を持つ。刃先が薄く袋部にかけて、次第に厚くなり、袋部は一方に飛び出していない。木を割るとき、つかえないためである。この袋部に短い縦の雇柄をつけ、長い横柄にはめ込んで使用した。もう一つの型は刃が縦長の有肩のもので、輪切にした木を縦割りして、比較的短い板を作るための斧で、大型と中型がある。(2)与岐型。頭部より刃の方がやや幅広く、袋部の下から撫肩で広がっている。刃は蛤刃のように外に張り出した円弧を描いている。大型、中型、小型があり、伐木、薪割など、さまざまな用途に用いる万能的な斧。(3)鐇型。肩を持つ刃幅広い斧で、伐採や木材を斫はつる場合などに用いる。出土例は少ない。(4)鉞型。短冊形で柄を挿入する袋部を持たない。この斧は最初は鑿か楔くさびではないかと言われていたのだが、出土品の中央上部に斜めの角度で木材が付着していた痕跡が見られることから、木の柄に穴を開けて装着した斧であると推定された。倒した木材の側面を削り、角材を作るのに用いる。(5)手斧型。比較的小型で、肩がはっきり成形されて

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